【定期テスト対策】パンの話《吉原幸子》 | 教科書本文解説・漢字語句(現代文)

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①本文

まちがへないでください
パンの話をせずに わたしが
バラの話をしてゐるのは
わたしにパンがあるからではない
わたしが 不心得ものだから
バラを食べたい病気だから
わたしに パンよりも
バラの花が あるからです

飢える日は
パンをたべる
飢える前の日は
バラをたべる
だれよりもおそく パンをたべてみせる

パンがあることをせめないで
バラをたべることを せめてくださいー

ー『夏の墓』


②著者情報

「詩人の言葉」より引用

吉原 幸子(よしはらさちこ)
1932年〜2002年。詩人。東京都の生まれ。人間の生死、愛や孤独などをテーマとするみずみずしい抒情詩を発表する一方、詩の朗読会にも意欲的に取り組んだ。詩集に『オンディーヌ』『夜間飛行』などがある。


③勉強のポイント

①「パン」「バラ」それぞれが何を指しているか理解する

②「バラを食べたい病気」から読み取れる作者の気持ちを理解する

③詩のタイトルが「パンの話」である理由を理解する


④漢字・重要語句

【1】まちがへないでください

《意味》
誤解しないでください、という意味でこんお言葉は第一連全体にかかっている。わたしが、パンの話をせずにバラの話をしているのは、わたしにパンがあるからではないのだ、と主張している。

【2】パンの話

《意味》
「パン」は食べ物、物質性のある生活の現実に関わるもの全般を比喩している。

【3】バラの花の話

《意味》
「バラ」は詩や音楽などの芸術、美や理想などの精神性を比喩している。

【4】わたしに〜ではない

《意味》
「わたし」がパンの話をせずにバラの話をしている理由は、自分にパンがあるからではない、と言っている。パン=物質的な現実の生活が十分かどうかに関わらず、バラ=芸術や美を求めてしまう作者の芸術至上主義。

【5】不心得もの

《意味》
心がけが良くない者。現実の生活を蔑ろにして、バラ=芸術のことばかり気にかけている自分を、「不心得もの」と「わたし」は呼んでいる。

【6】バラを食べたい病気

《意味》
「わたし」がパンよりもバラに惹かれるのは、バラを食べたい病気だから、という。一般には人々は、生きるためにパンを必要とし、物質的な豊かさを求める。詩人、芸術家の「わたし」は、人々とは異質であることを「不心得もの」「病気」という言葉で断罪し、自負もしているのである。

【7】わたしに〜あるからです

《意味》
「わたし」にはパンへの欲望より、バラへの希求、意志がより強くあるということ、純粋な芸術や美への希求を、確かな存在として、「わたし」の生きる実存の姿として自覚している。

【8】飢える

《意味》
物質的に飢える(=空腹)という意味と精神的に飢える(=心が満たされない)という意味があるが、その二行後の「飢える」とともに、前者の意味。

【9】飢える前の日は

《意味》
空腹に耐えられる前の日まで。第二連の一・二行と三・四行で対句的な表現になり、飢える日と飢える前の日を対比している。

【10】だれよりも〜たべてみせる

《意味》
飢えるギリギリの日まで、生活の現実に埋没せず、詩や芸術を希求する誇り高い一輪のバラ、詩であろうとするする作者の詩人としての意思が示されている。純粋に精神性を希求する「わたし」を、自他へ表明している。この連では「たべる」が平仮名になっている、一連の「食べる」は、食べる行為を連想させるのに対し、「たべる」は、自分の中に取り入れる、希求するというような暗喩ともなっている。

【11】パンが〜せめないで

《意味》
あなたは食べるに困らないから詩など書けるのだ、と作者の環境を責めたり、食べて行くために詩や芸術、夢を求めない世間の人々を責めたりしないでほしい、ということ。作者は、テレビ番組の収録で「この詩は学生時代の議論『詩を書くことは食べるに困らないから、夢のようなことが言えるのだ』『ある人間にとっては食べる食べないより、夢の方が大事なこともあるのだ』ということに対する、卒業後10年も経ってからのわたしなりの返事である」、と述懐している。「人はパンのみに生きるにあらず」という『新約聖書』の一節、人は物質的なものだけでは生きられず、精神性を求めずには生きられない、ということを踏まえた議論であろう。

【12】バラを〜せめてください

《意味》
パンよりバラを食べたい病気、世間から見たら不心得ものの自分をせめよと、人々とは異質な詩人、芸術家としての矜持を表出している。食べることを求める世間一般的な価値や環境を軽んじているのではなく、パンよりバラがないとより切実に飢えて生きられない「わたし」の異質性、孤独なほこり高さも感じられる。


⑤段落要約

『パンの話』は詩のため、段落要約はなし!そのかわり第一連〜第三連までの構成を説明します。

【1】主題

この詩は、作者の純粋な芸術至上主義を、パンとバラの比喩で美しく描いている、物質性よりも精神性を希求する「不心得もの」の自身を、誇り高く謳う。

【2】第一連

主題を他者(読者、観客)へ表明。

【3】第二連

主題に対する自己表明。
第二連は、自分じしっっへの決意として、一つの詩の中に対話と独白が織り交ぜられる、一人演劇のような構成になっている。

【4】第三連

主題を他者(読者、観客)へ表明。

【5】詩の形式・表現技法・特色

表記には、一部歴史的仮名遣いが見られるが、口語自由詩である。詩句には、作者の感性がストレートに表現されている。


⑥定期テスト予想問題

【第1問】
この詩において「パン」と「バラ」は、それぞれどのようなものを例えているだろうか。

【解答のポイント】
ぜひ、ここまで勉強してきた④漢字・重要語句、⑤段落要約を確認してみましょう。

【解答例】
「パン」は食べ物、物質性のある生活の現実を比喩し、「バラ」は芸術や文化、美や理想などの精神性に関わることを比喩していると考えられる。


【第2問】
①だれよりもおそく パンをたべてみせる
②パンがあることをせめないで
バラをたべることを せめてくださいー

【解答のポイント・解答例】
ぜひ、ここまで勉強してきた④漢字・重要語句、⑤段落要約を確認してみましょう。


【第3問】
表題が「バラの話」ではなく、「パンの話」となっているのは何故だろうか。

【解答のポイント】
ぜひ、ここまで勉強してきた④漢字・重要語句、⑤段落要約を確認してみましょう。

【解答例】
「わたし」は、パンよりバラを求めているのだから、詩の表題は「バラの話」であっても良さそうなものである。しかし、表題は「パンの話」となっている。人々が生きるために「パン」が必要不可欠なように、「わたし」にとっては、「バラ」が必要なのである。「わたし」が生きる糧は「バラをたべる」こと。「わたし」はバラで出来ていて、「わたし」にはバラがある。「パンの話」という表題は、人々のパンが自分にはバラなのだという思いを、倒錯的。逆説的に表明している。


詩は面白いですが、解釈が難しいですね!!

最後まで見てくださってありがとうございました🐻
定期テストがんばれ〜🐻

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