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⓪授業前にひとこと
今日は「ミロのヴィーナス」をやっていきます❗️
この作品は、私が学生だった頃(約15~16年前w)から教科書に掲載されている作品で、当時「ミロのヴィーナス」を読んで、意味わからなくて混乱したのを覚えています笑。
ちなみに自分は、愛知県立旭丘高校という、愛知県で言えばそれなりの進学校に通っていたので、学力はそれなりにあったと思いますが、「ミロのヴィーナス」はわからなかったです…。
なので、この作品を読んで、「何言ってるんだ〜」と困っている学生さんは安心してください❗️あなただけじゃないです、私もそうでした!
ただ、分からんまま定期テストに突撃するか、しっかり勉強し理解した上でテストに挑むかは、天と地ほどの差がありますので、授業聞いてしっかり学んでもらえたら嬉しいです🐻
理解できると、とても面白い作品です。
ミロのヴィーナス。
①本文
②著者情報
清岡 卓行(きよおかたかゆき)
1922年〜2006年。詩人・小説家。中国大連の生まれ。日常生活を基盤とし、繊細な叙情性に貫かれた作品が多い。詩集に『氷った焔』、小説に『アカシヤの大連』などがある。本文は『手の変幻』によった。
③勉強のポイント
①ミロのヴィーナスが魅惑的である理由について、筆者の考察を読解する。
②ミロのヴィーナスは、両腕を失ったことにより完全な美になり得たという、筆者の発見と感動を、筆者の表現の特色(擬人法、比喩、逆説)を追いながら読み解く。
④作品をざっくり理解しよう
ミロのヴィーナスの魅力は両腕を失っていることにある。
それは部分を失うことによる全体性への肉迫であり、無数の美しい腕の暗示する表現である。
失われているのが手という人間的なものであることを含めて、ミロのヴィーナスの像は、さまざまな手のあり方を想像させ、復元を拒否して生き続ける芸術作品である。
⑤漢字・重要語句
【1】魅惑的
《意味》
魅力によって人を惹きつけ、惑わせる様子。
【2】不思議な思いにとらわれた
《意味》
一見理屈に合わないように思えることにこだわりを持った
【3】製作者のあずかり知らぬ何ものか
《意味》
作った人が関与しない何か。
*あずかる=関わる・関係する
【4】巧まざる跳躍
《意味》
「巧まざる」=意図しない
つまり、特殊から普遍への急激の展開が、意図してのことではなく、偶然もたらされたということ。
【5】部分的な具象の放棄
《意味》
「具象」=はっきりとした姿や形があること
ここでは、ヴィーナスが両腕(部分)を失ったことを指す。
【6】ある全体性への偶然の肉迫
《意味》
「全体性」=一つのまとまりをもち,さらに細かい部分に割ることによってその特質が失われてしまうようなとき,そこにみられる独自の構造や機能上の特性をいう。
「肉迫」=鋭く問い詰める・迫ること。
ここでは、ヴィーナスが両腕(部分)を失うことによって、心象的な表現として(心の中のイメージとして)、普遍的な全体性(両腕を持ったヴィーナスの全体像)に迫っているということ。
【7】逆説を弄しようとしているのではない
《意味》
「逆説」=一見真理に反するようで、実は一面で真理を言い表している説のこと。
「弄する」=もてあそぶ
ここでは、一見矛盾することを言って理屈をもてあそんでいるように見えるが、そうではないということ。
【8】高雅
《意味》
けだかく優雅なこと。
【9】豊満
《意味》
(女性の)体の肉付きの良いこと
【10】典型
《意味》
本質的なものを最もよく具体的に表している言葉。
模範・代表例となるようなもの。
【11】均整の魔
《意味》
「均整」=つりあいがとれ整っていること。
「魔」=人を迷わすもの。
ここでは、人の心を惑わせるほどつり合いが取れていて、美しいこと。
【12】神秘的な
《意味》
ふつうの理論、認識をこえた不思議なさま。
【13】生命の多様な可能性の夢
《意味》
「多様な」=いろいろと種類の違ったものがあること。
ここでは、ミロのヴィーナスの失われた両腕が、ないことによって逆に多様なあり方を想像させる様子を表す。後に出てくる「存在すべき無数の美しい腕への暗示」や「全体性(両腕のあるヴィーナスの全体像)への羽ばたき」も同じニュアンス。
【14】深々とたたえている
《意味》
「深々と」=身にふかく染みとおる様
つまり、身に深く感じながら賞賛しているということ。
【15】心象的な表現
《意味》
「心象」=心の中に具体的に再生された印象(イメージ)や記憶
つまり、心の中にイメージとして浮かんだ表現、ということ。
【16】滑稽でグロテスクなもの
《意味》
「滑稽」=言動がおどけていて、おもしろくおかしいこと。また、ばかばかしくておかしいこと。
「グロテスク」=フランス語で、奇怪な・異様なという意味
つまり、ばかばかしくて、異様であるものということ。
【17】失われた原形
《意味》
ミロのヴィーナスの元々の像の形。
【18】客観的に推定されるはず
《意味》
「客観的に」=だれが見てももっともだと思われるような立場で物事を考えるさま。(⇔主観的)
「推定」=ある事実を手がかりにして、おしはかって決めること
つまり、誰が見てももっともだと思われるような立場で考え、その立場から推し量って決めること、という意味。
【19】表現の次元
《意味》
「表現」=心に思うこと、感ずることを、色・音・言語・所作などの形によって、表し出すこと
「次元」=物事を考えたり行ったりするときの立場。
ここでは、ミロのヴィーナスの両腕を復元することで、ミロのヴィーナスの美しさの表し方・考え方が、夢をはらんだ無から、限定された有へと変わってしまったということ。
【20】そうして他の対象へ遡ったりすることができるだろうか?
《意味》
両腕が復元されたヴィーナスは、すでに異なる対象であり、復元される前のヴィーナスと同じ感動を抱く(=遡る)ことはできないということ。
【21】おびただしい夢をはらんでいる
《意味》
「はらむ」=中に含んでいること
数えきれない夢を含んでいる。
【22】人柱像
《意味》
古代ギリシア神殿の神や人をかたどった石柱
【23】笏(しゃく)
《意味》
ここでは、威儀(=いかめしく重々しい動作。立ち居振る舞いに威厳を示す作法)を示すために持った杖
【24】羞恥の姿態
《意味》
「羞恥の」=恥ずかしく思うこと。恥じらい。
「姿態」=ポーズや身のこなしが作る姿
つまり、恥じらっているポーズ、ということ。
【25】実証的に、また想像的に、さまざまに試みられている
《意味》
「実証的に」=思考だけでなく、体験に基づく事実などによって結論づけられるさま。
ここでは、ミロのヴィーナスの両腕の復元が、思考だけでなく体験したことによって、またイメージの中で、いろいろ試されている、ということ。
【26】芸術というものの名において
《意味》
真の原形は、芸術という観点から見れば、ぼくが感動したものとは全く異なる、という意味。一行前の「ぼくは一種の怒りをもって、その真の原形を否認したいと思うだろう」とセットで、倒置法が使われている。
【27】生命の変幻自在な輝き
《意味》
「変幻自在」=変化が速やかで自由なこと
生命が持つ、変化が速く、かつ自由であるがゆえの輝き・美しさ、という意味
【28】トルソ
《意味》
イタリア語で、顔や手のない胴体だけの彫像のこと。
【29】きりつめていえば
《意味》
簡単に言えば。
【30】人間存在における象徴的な意味について
《意味》
「象徴的な」=抽象的(あいまい・具体性のない)な思想・観念・事物などを、具体的なモノによって理解しやすい形で表すさま。
(例:平和の象徴である『鳩』)
つまりここでは、人間という存在を理解する上で、分かりやすいのは「手」であることが指す意味について・・・ということである。
【31】根源的に暗示しているものはなんだろうか?
《意味》
「根源的に」=ある物事を成立させる一番もとのものであるさま。 大もとであるさま。 根本的。
「暗示」=それとなしに知らせること。
ここでは、「手」が、人間が人間であることを成立させる大もとであるように、それとなしに伝えているのはなんだろうか?という意味。
【32】実体と象徴のある程度の合致
《意味》
人間の具体的な手(=実体)と、手に象徴される意味とが、場面に応じて一致することがあること、という意味。
【33】千変万化
《意味》
さまざまに変化すること。
【34】媒介
《意味》
二つのものの間にあって、両者の関係のなかだちをすること
【35】原則的な方式
《意味》
「原則的な」=多くの場合に共通に適用される基本的なきまり・法則のようなもの。
「方式」=一定の形式。定まっている手続・やり方
ここでは、世界・他人・そして自分との関係を取り持つための基本的な決まり・やり方のこと、を指す。
【36】こよなく
《意味》
この上なく。最高に。
【37】讃えた
《意味》
ほめた。
【38】述懐
《意味》
思いを述べること、伝えること。
【39】厳粛な響きをもっている
《意味》
おごそか(=気持ちが引き締まるほどおもおもしいよう)に聞こえる
【40】美術品であるという運命を担った
《意味》
ミロのヴィーナスは両腕を失うことによって、芸術作品として生きることになった、という意味。
【41】アイロニー
《意味》
皮肉,反語。 言いたいことの反対を述べることによって、言いたいことをいっそう効果的に相手に理解させる方法。
ここでは、ミロのヴィーナスが両腕を失っていることで、逆に両腕(特に手)への可能性を生み出し、たくさんの想像を育ませるということ。それを最終文で「夢を奏でる」という表現につなげている。
【42】夢を奏でる
《意味》
【41】アイロニーとセットで確認すること!(不在の手)が美しい夢を生み出すという意味。
⑥段落要約
①第一段落
ミロのヴィーナスが魅惑的である為には、両腕を失っていなければならなかった。そこには制作者の知らない美術作品の運命が関わっている。彼女は発掘された時、自分の美しさのために両腕を無意識的に隠してきたのだ。それは特殊から普遍への跳躍であり、部分の放棄による全体性への肉迫と言える。ミロのヴィーナスの失われた両腕は、生命の多様な可能性の夢を讃えて無数の美しい腕の暗示する、心象的な表現である。
②第二段落
ぼくにとって、ヴィーナスの両腕の復元案は全て滑稽なものである。全ての復元の試みは正当だが、その試みで表現の次元そのものが変わってしまう。どんなに素晴らしくても、復元は夢をはらんだ無から限定された有への変化なのだ。たとえ真の原形が見つかっても、ぼくはそれを芸術の名において否認する。
③第三段落
なぜ、失われたものが両腕でなければならないのかといえば、手は人間全体において象徴的な意味を持つものであるからだ。てが世界や他人や事故との交渉の手段であるからこそ、失われることによって逆に、考えうるさまざまな手への想像を広げるという、不思議なアイロニーを呈示するのである。
⑦定期テスト予想問題
【漢字問題(本文中)】
1.ミワク的である
2.権利をホウキする
3.心地よいフンイキ
4.コッケイなしぐさ
5.コンワクの表情
6.ゲンシュクに受け止める
7.未来をニナう
8.音楽をカナでる
【解答】
1.魅惑 2.放棄 3.雰囲気 4.滑稽 5.困惑 6.厳粛 7.担 8.奏
【第一問】
第一段落中盤に「このことは、ぼくに、特殊から普遍への巧まざる跳躍であるようにも思われるし〜」とあるが、「このこと」とはどのようなことを指すか?
【解答のポイント】
「この」は指示語であるため、とくに前文を注意して確認する。また問われているのは、「このこと」なので、回答する際には「〜こと」で終わるように気をつける。
【解答例】
ミロのヴィーナスがパリのルーヴル美術館に運ばれる際に、自分の美しさがよりよく国境を渡り、時代を超えていくために、両腕を無意識的に隠してきたこと。
【第二問】
第二段落始めに、「もちろん、そこには、失われた原形というものが〜ぼくの困惑は勝手なものだろう。」とあるが、「ぼくの困惑」とはどういうことか?
【解答のポイント】
「ぼくの / 困惑」と分解すると、「ぼくの」の部分は分かりやすく、「ぼくにとっては」という意味を表す。「困惑」は感情を表す言葉なので、何に対して困惑しているのかを示すこと。また「困惑」を本文中の言葉で言い換える(1文前を確認してね)ことができたらベスト🐻
【解答例】
ぼくにとっては、ミロのヴィーナスの失われた両腕の復元案というものが、全て興ざめたもの、滑稽でグロテスクなものに思われること。
【第三問】
次の表現はどのようなことを言っているか。わかりやすく説明せよ。
①部分的な具象の放棄による、ある全体性への偶然の肉迫(第一段落)
②表現における量の変化ではなくて、質の変化である(第二段落)
③手というものの、人間存在における象徴的な意味(第三段落)
【解答のポイント】
⑤漢字・重要語句、⑥段落要約で説明した内容を振り返ろう!
【解答例】
①ミロのヴィーナスが両腕という部分的な具象を失うことで、心象的な表現として普遍的な全体性に迫っていること。
②復元案は、失われた両腕が元の形に復元されるという量的な変化ではなく、おびただしい夢をはらんでいた美の質そのものが限定されてしまうということ。
③手が世界や他人や自己との、千変万化する交渉の手段であり、関係を媒介するものであり、原則的な方式そのものであること。
【第四問】
第三段落最後に「ほかならぬその欠落によって、逆に、可能なあらゆる手への夢を奏でるのである。」とあるが、どういうことか。
【解答のポイント】
「ほかならぬその欠落」とはヴィーナスの両腕が失われていることを指すが、それは手というものが「人間存在における象徴的な意味」を持つものであるからこそ可能になった、という流れでまとめる❗️
(手以外ではこうは感じないという第三段落の内容を再度チェック!)
【解答例】
肉体の他の部分ではなく、人間存在における象徴的な意味を持っている両腕が失われているからこそ、そこにおびただしい夢をはらむことが可能になったのだということ。
ミロのヴィーナスは、評論文で使われる難易度の高い言葉も多く、理解するのが大変でしたね!ただ評論文はこうやって一文一文丁寧に、意味を確認しながら、理解していくことで確実にレベルアップできます🐻
こういう学習が受験勉強にもつながってくるので、ファイト🔥
最後まで見てくださってありがとうございました🐻
定期テストがんばれ〜🐻
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